目の下のクマ・たるみ

目次

目次
1 下瞼~頬の加齢による症状
2 原因
3 目の下のクマ・たるみの手術
4 9つの手術方法
5 9つの手術方法のどれを選ぶか?

下まぶた〜頬の加齢による症状

 上まぶたの老化は,眉毛~額(上顔面)と密接な関係があり,下まぶたの老化は,頬と密接な関係があります.下まぶた〜頬を一緒に中顔面として治療方法を考えます.

見た目の変化としては,

頬が重力で下がったり,組織が痩せてくると,下まぶたと頬の間の溝(②瞼頬溝(けんきょうこう))が深くなり,いわゆる黒クマが目立ってきます.

下まぶたが膨らんでくると(③目袋と言います)さらに黒クマを目立たせます.目袋は,若い人のまぶたの縁にそって見られる④涙袋とは違います.逆に涙袋は目立たなくなります.

⑤その他に目尻を中心に細かい皺が増えていきます.

下まぶた~頬の加齢の原因

それぞれの症状は何故起きるのでしょうか?

①頬部下垂の原因

靭帯(骨から伸びて皮膚や皮下組織を支える線維性組織)が年をとるにつれて弱くなり,支えられなくなる事が原因です.

②深い瞼頬溝の原因

頬部の下垂に加えて,骨・眼輪筋・皮下脂肪年をとるにつれて萎縮してボリュームが減るので,深い溝が出来ます.

③下まぶたの膨らみの原因

眼窩脂肪(眼球の周りにあるクッションの役割をしている脂肪)が眼窩外に出てくる(ヘルニア)ため下まぶたが膨らんで見えます.

その原因としては

  1. 眼窩脂肪が前方に出る力が強い
  2. 眼窩脂肪を抑えている力が弱い

⑴眼窩脂肪が前方に出る力が強いのは,❶眼窩脂肪が生まれつき多かったり,❷眼窩脂肪が他の身体の脂肪と同様に太ってくる場合や❸眼球を支える靭帯が,加齢により弛むことにより眼球の位置が下がり,眼窩脂肪が前方へ押しだされる等の原因が考えられます.

⑵眼窩脂肪を前方から後方へ抑えている力が弱いのは,眼窩隔膜,眼輪筋(まぶたに輪状にある閉じる筋肉),皮膚加齢により薄くなっていくためだと考えられます.

④涙袋が目立たない原因

涙袋は眼輪筋によってできる力こぶですが,加齢により萎縮して弱くなったり,眼窩脂肪が出過ぎていると中に押し込めないので,目立たなくなります.

⑤下瞼の皺の原因

皮膚は加齢により表皮,真皮が薄くなり,真皮結合組織の膠原繊維と弾力線維の収縮力・復元力が低下し,繰り返す顔の表情筋による動きにより皺が増えていきます.深い皺はたるみが原因になる事もあります.

目の下のクマ・たるみの治療

頬部

①頬部の下垂

垂れ下がった頬部の脂肪組織を糸で持ち上げます.(ミッドフェイスリフト)

②深い瞼頬溝

萎縮して凹んだ部位を膨らませます.

 ❶眼窩脂肪の一部を頬部に移動(ハムラ法

 ❷切除眼窩脂肪を移植(遊離脂肪移植)

 ❸切除眼窩脂肪を細断して注入(脂肪注入)

 ❹大腿等から吸引した脂肪を注入(脂肪注入)

 ❺ヒアルロン酸注入

等の方法があります.

下眼瞼

③下まぶたの膨らみ

⑴前方に眼窩脂肪が出る力を減らす

  ❶眼窩脂肪を一部摘出(脱脂)

  ❷眼窩脂肪の一部を頬部に移動

   (眼窩脂肪移動→ハムラ法の操作の1つ)

⑵前方から眼窩内に眼窩脂肪を押し戻す

  ❶眼窩隔膜の骨膜固定

  ❷外側眼輪筋弁の吊り上げ骨膜固定

  ❸皮膚切除

   ※❷❸は皮膚を切開しないとできない

④涙袋が目立たない

下まぶたの膨らみを治療する事により自然と涙袋が出てくる患者さんが多いですが,元々小さい人にはヒアルロン酸を注入する方法や,眼輪筋を重ねあわせて涙袋形成する手術があります.

⑤下まぶたの皺

笑ったり,目を閉じたりする時に出来る目尻を中心とした表情皺には,表情筋の1つである眼輪筋にボトックスという筋肉を弛緩させる製剤を注射します. 皮膚のたるみが原因だと判断した時には,睫毛下で皮膚切除を致します.

9つの手術方法

患者さんの症状に合わせて,上記操作を組み合わせて治療を計画するので,当院では下記の9つの手術方法から最適なプランを提案致します.

目の下のクマ・たるみの手術方法

❶皮膚切除

❷皮膚切除+脂肪注入

❸経皮脱脂

❹経皮脱脂+脂肪注入→詳細はこちら

❺経皮脱脂+眼窩脂肪を用いた頬部治療※→詳細はこちら

❻経結膜脱脂→詳細はこちら

❼経結膜脱脂+脂肪注入→詳細はこちら

❽経結膜脱脂+眼窩脂肪を用いた頬部治療※

❾脂肪注入→詳細はこちら

  • ※頬部処置は,下記の3つのいずれかを術中に判断して行います.
  • ①眼窩脂肪を眼窩内から頬部に移動(ハムラ法
  • ②切除眼窩脂肪を移植(遊離脂肪移植)
  • ③切除眼窩脂肪を細断して注入(脂肪注入)

9つの手術の方法のどれを選択するか?

下まぶたのたるみ,黒クマに対する治療方法の選択基準を説明致します.治療方法の選択は非常に重要で,間違った方法を選択すると,十分にクマが治らなかったり,悪化する事さえあります.病状を正確に診断し,最適な治療方法を選択する必要があります.

主な診察ポイント

①皮膚のたるみ(部位,程度)

②下眼瞼の突出(部位,程度)

③頬の下垂,陥凹(部位,程度

主な診察ポイント(①皮膚のたるみ②下眼瞼の突出③頬の下垂)を元にフローチャートに沿って,推奨される術式を提案します.

その他の診察ポイント

④下眼瞼内反症・外反症,睫毛内反症がないか

⑤安静期間をどのくらい取れるか

⑥顔全体の加齢の程度

⑦治療費

○加えて,④下眼瞼に眼瞼内反症・外反症や睫毛内反症などの疾患があったり,それに準じた瞼の水平方向・垂直方向のゆるみがある場合には,経皮的に治療を同時もしくは,二期的に行う術式を選択いたします.

○また,手術に伴う⑤ダウンタイム(内出血や腫れ等で社会復帰までに要する期間)があるので,安静期間・仕事等を休める期間をどのくらい取れるかも重要です.長く取れない人は短いダウンタイムの術式を提案したり,休める時期に手術を受ける事を,お勧めしております.

○⑥顔全体の加齢の進行度合いも術式の選択に重要です.中顔面(下まぶた〜頬)だけでなく,上顔面(額〜上まぶたのシワ・たるみ,眼瞼下垂)や下顔面(顎・フェイスラインのたるみ)の加齢変化も考えて,頬が過度に膨らみ過ぎないように気をつけたり,他の部位の治療も併用する必要があるかご提案いたします.実際,上眼瞼下垂手術・タルミ取りの手術(病状により保険適用の場合あり)した後に,下まぶたのクマ・タルミの治療を受ける患者様も多いです.

○⑦治療費も患者様にとっては,大切な判断基準だと思います.最終的に良い結果になるために,後から手術を追加するよりは最適な術式を最初から選択するほうが,一番治療費を抑えられます.